オフィスチェアの耐用年数を考えるとき、オカムラ(Okamura) や コクヨ(KOKUYO)、ハーマンミラー(Herman Miller) といった国内外のトップメーカーが示す品質や保証期間は、大きな判断材料になります。
これらのメーカーは、人間工学に基づいた設計と厳しい強度試験にもとづき、実使用に耐えうる年数やメンテナンス方法を前提に製品づくりを行っています。
一方で、実際のオフィスや自宅では、法定耐用年数・業界の標準使用期間・体感としての「寿命」が必ずしも一致しないのが現実です。「何年使ったら買い替えるべき?」「ガスシリンダーが下がってきたけれど、これは寿命?」「減価償却や経費処理はどう考えればいい?」といった悩みを抱える人は少なくありません。
本記事では、オフィスチェアの寿命と耐用年数の違いから、部品ごとの寿命とメンテナンスの考え方、価格帯別の耐久性と買い替え目安、さらに減価償却や経費処理の注意点まで、実務にも役立つ視点で整理して解説します。
この記事でわかること
- オフィスチェアの寿命と耐用年数の違い
- 部品ごとの寿命とメンテナンスの考え方
- 価格帯別の耐久性と買い替え判断の目安
- 減価償却や経費処理との関係と注意点
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オフィスチェア 耐用年数の基本
- 一般的な寿命と使用年数
- 法定耐用年数と実際の違い
- ガスシリンダーなど部品寿命
- 使用時間と環境が与える影響
- メンテナンスで寿命を延ばす
一般的な寿命と使用年数
オフィスチェアの実際の寿命は、一般的に五年から八年程度が一つの目安とされています。これは、一日八時間ほどの使用を前提に、座面やクッション、機構部が快適に機能し続ける期間として語られることが多い年数です。
ただし、適切なメンテナンスをしている場合や、使用時間が短い場合は八年から十年ほど使われるケースもあります。一方で、格安チェアでクッション材や機構部品の品質が低いものだと、数年で座り心地が悪化することもあり、同じ年数でも体感寿命には大きな差が出ます。
ここで押さえておきたいのは、見た目が壊れていないからといって、常に安全で快適だとは限らない点です。クッションのへたりによる姿勢の崩れは、腰や肩の負担につながるとされていますし、ガス昇降機構の不具合は思わぬ事故リスクにつながることがあります。
したがって、単に「何年使ったか」だけで判断するのではなく、使用感や不具合の有無も含めて総合的に考えることが大切です。この記事では以降の章で、制度上の年数や部品ごとの寿命も含めて整理していきます。
法定耐用年数と実際の違い
オフィスチェアには、税法上の法定耐用年数と、実際の使用年数という二つの軸があります。税法上は、金属製の事務いすで十五年、それ以外の材質で八年という区分があり、これは減価償却のための年数です。あくまで会計処理の都合で決められたものであり、座り心地や安全性と直接結びついているわけではありません。
一方、業界団体が示す標準使用期間としては、日本オフィス家具協会による八年という目安があります。これは、一日二十五回着座、年間二百五十日、八年間使い続けた状態を想定した強度試験から導かれた期間で、安全に使えるおおよその長さを示しています。
これらを整理すると、次のようなイメージになります。
| 種類 | 年数の目安 | 目的・意味 |
|---|---|---|
| 実使用の寿命 | 約5〜8年 | 快適性や安全性を保てる期間 |
| 業界標準使用期間 | 約8年 | 強度試験にもとづく安全上の目安 |
| 税法上の耐用年数 | 8年・15年 | 減価償却の計算のための会計上の基準 |
このように、オフィスチェアには複数の年数が存在しますが、ユーザーが日々の業務で意識すべきなのは、実際の使用感と安全性に関係する寿命の部分です。帳簿上の数字だけでは判断できないため、次の章で触れる部品寿命やメンテナンスと合わせて考える必要があります。
ガスシリンダーなど部品寿命
オフィスチェアは一つの製品ですが、中身は複数の部品で構成されています。その中でも寿命に大きく影響するのがガスシリンダーです。座ると勝手に下がってしまう、好みの高さで固定できない、上下動の際に引っかかるといった症状は、ガスシリンダーの劣化が疑われる典型的な状態です。
ガスシリンダーの寿命は、目安として三年から十年ほどとされています。使用時間や体重、座り方によって負荷が変わるため幅がありますが、長時間使用や乱暴な座り方が続くと、早い段階で不具合が出る場合があります。
座面クッションや背もたれは、ガスシリンダーよりも体感的に寿命を感じやすい部品です。座ったときに底付き感がある、クッションが元に戻らないといった感覚が出てくると、長時間の作業で疲れやすくなるとされています。張地の破れやひび割れも見た目だけでなく、クッション材の保護という機能面でも影響があります。
キャスターは、転がりが重くなったり、異音が出たりした段階で劣化を疑うべき部品です。床に傷が付きやすくなることもあり、フローリングでは特に注意が必要です。多くの椅子はキャスターやガスシリンダーだけの交換が可能なので、本体を丸ごと買い替える前に部品交換という選択肢も検討できます。
このように、オフィスチェアは部品単位で寿命が異なるため、全体の年数だけでなく、どの部分に不具合が出ているかを見極めることが大切です。
使用時間と環境が与える影響
同じ椅子でも、どれくらいの時間、どのような環境で使うかによって寿命は大きく変わります。一般的なオフィスでは一日八時間程度の使用を想定していますが、テレワークなどで実際の着座時間がそれ以上になっているケースもあります。着座時間が長くなればなるほど、クッションのヘタりやガスシリンダーの摩耗は進みやすくなります。
また、温度や湿度、直射日光の有無も劣化に影響します。高温多湿な環境では生地やクッション材が傷みやすく、カビの発生リスクも高まります。逆に極端に乾燥している環境では、合成皮革などの表面がひび割れやすくなります。窓際で直射日光を長時間浴びる配置だと、退色や硬化が進みやすいとされています。
オフィスの床環境も見逃せません。フローリングの上で硬いナイロンキャスターを使うと、床にもキャスターにも負荷がかかりやすくなります。カーペットやチェアマットを併用することで、キャスターの摩耗を抑え、結果として椅子全体の寿命を延ばしやすくなります。
使用者の体重や体格も負荷に直結します。耐荷重を大きく超える状態で継続的に使用していると、ガスシリンダーや脚部にかかるストレスは増大し、故障を早める要因となります。耐荷重と実際の使用状況のギャップを意識することで、寿命を見極める際の判断材料が増えます。
メンテナンスで寿命を延ばす
オフィスチェアの寿命は、日々のメンテナンスで大きく変わります。特別な道具を必要としない簡単なケアでも、定期的に行うことで五年程度の使用を八年から十年近くまで伸ばしやすくなります。
まず取り組みやすいのが清掃です。布やメッシュ素材の座面や背もたれは、定期的に掃除機でホコリを吸い取り、汚れが気になる箇所は薄めた中性洗剤で軽く拭き取る方法が推奨されています。合成皮革や本革の場合は、水拭きに加えて専用クリーナーや保革剤を使うことで、ひび割れや硬化を抑えやすくなります。
キャスター周りのメンテナンスも効果的です。髪の毛や糸くずが巻き付いたまま放置すると回転が悪くなり、床へのダメージも大きくなります。定期的にキャスターを外してゴミを取り除くだけでも、転がりの軽さが戻りやすくなります。
もう一つのポイントはネジやボルトの増し締めです。長期間の使用で少しずつ緩みが生じ、ギシギシとした音やガタつきの原因になります。その状態を放置すると、部品に余計な力がかかり、破損につながるおそれがあります。半年から一年に一度、付属の六角レンチなどで固定部を確認すると安心です。
さらに、乱暴な座り方を避けることも寿命を延ばすうえで欠かせません。勢いよく腰を下ろす、ロッキングを全開にしたまま体重を預ける、片側に大きく荷重をかけて座るといった動作は、ガスシリンダーや脚部に大きな負荷を与えます。毎日の小さな使い方の積み重ねが、結果として寿命の長さに反映されると考えられます。
オフィスチェア 耐用年数と選び方
- 価格帯別に見た耐久年数
- 買い替えサインとなる症状
- 高級チェアと格安品の違い
- 減価償却と経費処理の目安
- オフィスチェア 耐用年数の総まとめ
価格帯別に見た耐久年数
オフィスチェアの耐久性を考えるうえで、価格帯と品質の関係を押さえておくと、コストと寿命のバランスを取りやすくなります。目安として、低価格帯・中価格帯・高価格帯の三つに分けて考えると整理しやすくなります。
低価格帯は一万円前後までのチェアが中心です。この価格帯では、見た目や機能が充実していても、クッション材や機構部品の耐久性にばらつきがある場合があります。数年で座面が大きくへたったり、ガス昇降機構やキャスターに不具合が出るケースもあり、長期的な使用には向かないことがあります。
中価格帯はおおよそ二万円から五万円程度のワークチェアです。業務用として設計されたモデルが多く、日本オフィス家具協会の基準を満たしている製品も多数あります。適切なメンテナンスを前提にすれば、実使用で八年から十年程度を見込めるケースが多く、コストと耐久性のバランスが取りやすい層といえます。
高価格帯は十万円を超えるハイエンドチェアが中心です。このクラスは、フレームやメカ部分の強度が高く、部品交換や張替えを前提とした設計が採用されていることがよくあります。設計上の想定使用期間は七年から十年程度とされることが多いものの、実際には十年以上使い続けるユーザーも少なくないとされています。
この関係を整理すると次のようになります。
| 価格帯 | 想定される実使用年数の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 〜約1万円 | 約3〜5年 | 当たり外れが大きく長期利用に注意 |
| 約2〜5万円 | 約5〜10年 | 業務用中心でバランスの取れた耐久性 |
| 約10万円以上 | 約7〜10年以上 | 部品交換前提で長期使用が期待できる |
オフィスの利用年数や入れ替えサイクル、在宅ワークの頻度などを踏まえ、自社や自分に合った価格帯を選ぶことが、結果的にコストパフォーマンスを高めることにつながります。
買い替えサインとなる症状
オフィスチェアをいつまで使うかを判断するには、年数だけでなく、日常の使用感から見えてくるサインに目を向けることが欠かせません。買い替えの検討が必要となる症状はいくつかのパターンに分けられます。
まず、見た目の劣化です。張地の破れやほつれ、表面のひび割れ、目立つシミなどが広がると、オフィス全体の印象が損なわれます。金属部分に錆や腐食が進行している場合は、強度面での不安も生じやすくなります。来客や社員のモチベーションを考えると、一定以上の劣化が目立つ段階で入れ替えを検討する価値があります。
次に、座り心地の変化です。長時間座ると腰やお尻が痛くなる、座面が局所的にへこんでいると感じる場合、クッション材が十分に機能していない可能性があります。背もたれのサポート感が弱まり、正しい姿勢を保ちにくくなっている状態も要注意です。こうした状態を放置すると、身体への負担が積み重なりやすいとされています。
機能面の不具合も、買い替えの大きなサインです。ガス昇降機能が正常に動作せず、座ると勝手に下がる、リクライニングが固定できない、キャスターがスムーズに転がらず引っかかるといった症状が続く場合、内部の部品が限界に近づいていると考えられます。部品交換で対応できるケースもありますが、使用年数が長く他の部位も劣化している場合は、本体の更新を視野に入れる必要があります。
さらに、使用年数としても五年以上経過している椅子は、一度全体の状態を点検する段階に入っていると考えられます。八年を超えている場合、安全面と快適性の両方を見直し、まとめて買い替えるタイミングとして検討する企業も多く見られます。
高級チェアと格安品の違い
高級チェアと格安チェアでは、耐用年数だけでなく、設計思想そのものに違いがあります。単純に価格だけを見るのではなく、どのような使い方を想定しているのかを理解すると、投資判断がしやすくなります。
格安チェアは、短期間での導入コストを抑えることを目的にしていることが多く、素材や機構部品も最低限の品質にとどまる場合があります。見た目のデザインや機能数は充実していても、クッション材の密度が低かったり、金属フレームの強度が十分でなかったりすると、数年で座り心地や安定感に不満を感じる可能性があります。
一方、高級チェアは長時間の使用を前提に、人間工学にもとづいた設計がされていることが一般的です。背骨のカーブに合わせた背もたれ形状や、細かく調整できるアームレスト、座面の奥行き調整など、使用者の体格に合わせて姿勢を整えやすくする仕組みが組み込まれています。こうした構造は、日々の疲労蓄積を抑えることを狙ったものとされています。
耐久性の面でも、高級チェアはフレームやメカ部分の強度が高く、部品交換を前提とした構成になっていることが多いです。ガスシリンダーやキャスター、アームレストなどを後から交換できるモデルであれば、本体を長期間使い続けつつ、傷んだ部分だけを更新する運用が可能になります。
コスト面だけを見ると、高級チェアは導入時の負担が大きく感じられますが、実使用年数で割り戻した場合、一年あたりの費用が中価格帯や格安チェアと大きく変わらないケースもあります。使用時間が長い職種や、従業員の健康管理、生産性向上を重視する企業ほど、高耐久のチェアを選びやすい傾向があります。
減価償却と経費処理の目安
法人や個人事業主にとって、オフィスチェアは単なる備品ではなく、会計処理の対象となる資産です。減価償却や経費処理の考え方を理解しておくことで、導入時の判断や入れ替え計画を立てやすくなります。
税法上、オフィスチェアは事務机やキャビネットと同じ区分に含まれ、主として金属製の場合は十五年、それ以外の材質の場合は八年という法定耐用年数が設定されています。この年数を基に、複数年にわたって減価償却費として計上していくのが一般的な処理です。
一方で、取得価額が十万円未満の備品は、消耗品費として一括で経費計上できるケースが多くあります。三十万円未満の資産に対する特例など、制度上の例外も存在するため、実務では税理士や会計事務所の方針に従うのが堅実です。
ここで意識したいのは、会計上の耐用年数と、実際の使用年数が一致しない点です。帳簿上は八年や十五年で償却していても、実際には五年程度で買い替えを行うケースも存在します。逆に、高級チェアをしっかりメンテナンスしながら十年以上使用する場合、帳簿上は償却が終わっていても、現物は問題なく現役で活躍していることもあります。
導入前には、次のような観点で考えると整理しやすくなります。
| 観点 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 取得価額 | 十万円以上か未満か |
| 資産区分 | 金属製かそれ以外か |
| 使用予定年数 | 実際にどれくらい使う想定か |
| 買い替え計画 | オフィス全体の入れ替えサイクルとの整合性 |
これらを総合的に考え、会計処理と実際の運用の両方で無理のない選択をすることが、資金繰りと働きやすさの両立につながります。
オフィスチェア 耐用年数の総まとめ
- オフィスチェア 耐用年数は実使用で五〜八年が一つの目安となる
- 日本オフィス家具協会の標準使用期間は八年で安全上の指標になる
- 税法上の耐用年数は金属製十五年その他八年と定められている
- ガスシリンダーやクッションなど部品ごとに寿命の長さは異なっている
- 使用時間が長いほどクッションや機構部の劣化スピードは早まりやすい
- 温度湿度直射日光など環境要因もオフィスチェア 耐用年数に影響する
- 定期清掃やネジの増し締めで安全性と快適性を長く保ちやすくなる
- 安価な椅子は導入しやすい反面三〜五年程度で劣化する場合が多い
- 中価格帯の業務用チェアは八年前後の使用を想定した設計が主流である
- 高級チェアは部品交換を前提とし十年以上の使用も視野に入れやすい
- 張地の破れクッションのへたり機能不良は買い替え検討の分かりやすいサイン
- 法定耐用年数はあくまで会計上の基準で実際の寿命とは別に考える必要がある
- 取得価額十万円以上の椅子は減価償却資産として複数年で費用化される
- オフィスチェア 耐用年数を意識した選定はコストと生産性の両立に直結する
- 使用年数だけでなく使用感と安全性を基準に主体的に買い替えを判断していく



